人生は祭りだ Vol12ヴェネツィア~ドロミテ~ミラノ:結びに変えて。2022初夏、訪伊した話

人生は祭りだ Vol12ヴェネツィア~ドロミテ~ミラノ:結びに変えて。2022初夏、訪伊した話

この連載も今回で終了です。思い出話をメインに書く連載は、初めは乗り気ではありませんでしたが、意外と贅沢な時間でした。というのも、過去を振り返るのって、あまりカッコいいことではないし、意味のないことだと思っていたからです。しかしながら、”イタリアで過ごした時間”、という制限付きの過去を振り返れたことは、七転八倒したり、悪あがきした時間、当時は客観的に見られなかった自分、を振り返ることにつながりました。逆説的になりますが、このことは自分達の現在地を知るいいきっかけにもなりました。 最後は結びの挨拶に変えて。...

人生は祭りだ Vol11ミラノ:空手の先生のお手本が、やや芝居がかりすぎていた話

人生は祭りだ Vol11ミラノ:空手の先生のお手本が、やや芝居がかりすぎていた話

2016年初冬。僕たちは年明けに日本へ本帰国することを決断した。ミラノに来て1年半が過ぎ、丸2年が見え始めた頃だった。ミラノでの暮らしは楽しかった。子供たちはすっかり慣れて、友達もたくさんできた。一方で、僕の仕事のことや、日本に残してきた会社のこと。高齢に差し掛かった親のことなどを考えると悩ましかった。多くの理由があり、僕らは日本に本帰国することに決めた。いざ帰るとなると、ミラノはクリスマスに近づき、慌ただしい雰囲気の中、上の娘は、イタリアの友達と離れるのを寂しがり、最後に何件か、仲良しのお家にお泊まりをさせてもらい、最後の時間を楽し...

人生は祭りだ Vol10トスカーナ他:池、川、海で釣ったよくわからない魚たちを素揚げにして食べた話

人生は祭りだ Vol10トスカーナ他:池、川、海で釣ったよくわからない魚たちを素揚げにして食べた話

当時3歳だった息子を、ミラノ郊外の釣り堀に連れて行った。魚が大好きだったので。現地に着くとレンタルの釣竿や餌を買って、いわゆる釣り堀的な池に糸を垂らした。仕組みは確か日本とあまり変わらなかった気がする。その池には何人か、もうちょっと年上のお兄ちゃんたちも居て、息子の方をチラチラと見てきた。息子もチラチラ意識していた。「おいチビ、ほんとにちゃんと釣りできるのか?」と言わんばかりの、アウェイな視線が息子に注がれいて、息子も勝ち気に「見てろよ」と言わんばかりのオーラを出していた。僕にはそれが、サッカー選手が欧州リーグに渡り、はじめは、お手並...

現代イタリア映画情報3「マカルーソ姉妹」監督:エンマ・ダンテ

現代イタリア映画情報3「マカルーソ姉妹」監督:エンマ・ダンテ

第77回ヴェネツィア映画祭内でパシネッティ賞(イタリア映画ジャーナリスト連合贈られる賞)を受賞した「マカルーソ姉妹」(伊:Le sorelle Macaluso)は、演出家エンマ・ダンテ2作目のフィクション長編映画。自身が幼少期を過ごした故郷シチリア島の社会に一石を投じ、その時代について問題提起を試みた社会派のヒューマンドラマだ。...

人生は祭りだ Vol09トルニョン:スキー学校の先生がイケメンすぎた話

人生は祭りだ Vol09トルニョン:スキー学校の先生がイケメンすぎた話

今は夏に向かう季節ですが、今回は冬のお話。ミラノに住んでいた頃、スキーへよく行った。アルプスも近いのでスキー場はよりどりみどり。その中でも僕たちが足繁く通ったのはトルニョンという街で、モンテビアンコの近く。(モンテ=山、ビアンコ=白。フランス語ではモンブラン)初めて行った海外のスキーリゾートは、ゲレンデは日本と同じだったが、それ以外は随分とおしゃれで洗練されて見えた。...

現代イタリア映画情報2「幸福なラザロ」監督:アリーチェ・ロルヴァケル

現代イタリア映画情報2「幸福なラザロ」監督:アリーチェ・ロルヴァケル

2018年度第71回カンヌ映画祭で最優秀脚本賞を受賞した「幸福なラザロ」(伊:Lazzaro felice)は現代のイタリア映画界を代表するアリーチェ・ロルヴァケル監督による自身3作目の長編映画だ。 コンテンポラリーな映画には珍しく、語り手方式を採用した本作は自身で執筆した脚本に、時代を超越する寓話を通じてイタリアという国の重大な変化を物語っている。...

現代イタリア映画情報1「君の名前で僕を読んで」監督:ルカ・グァダニーノ

現代イタリア映画情報1「君の名前で僕を読んで」監督:ルカ・グァダニーノ

2018年度アカデミー脚色賞を受賞した「君の名前で僕を呼んで」(英:Call me by your name)は、監督を務めたルカ・グァダニーノの名を世界中に広く知らしめた映画。その魅力は優れた構成と俳優たちの演技に加え、80年代のイタリアを詳しくリアルに描写している点だろう。...

人生は祭りだ Vol08ヴェネツィア:3歳の息子がホテル従業員用のトイレで、無断で用を足していた話

人生は祭りだ Vol08ヴェネツィア:3歳の息子がホテル従業員用のトイレで、無断で用を足していた話

2015年10月。ミラノでの暮らしも半年が過ぎ、家族もだいぶイタリアに馴染み始めた頃。3歳の息子を、パパと二人での旅に行こうと誘うと、いいよ、という意外な返事。行き先はどうしようか。ヴェネツィアなんかいいんじゃない。二泊三日くらいで。今こうして書くと贅沢に聞こえますが、ミラノに暮らしていれば電車で1時間半くらいの距離だし、男同士だから泊まるのは安い民宿でいいかと、気楽にいけました。とはいえ、まだ3歳。当時息子は、割と重い卵アレルギーもあったので、冒険は冒険だった。...