by Ryota Takahashi | Mar 31, 2021 | AUTOMOTIVE / 自動車業界, IAM NEW
RIVA
イタリアにはRIVAという名前のボードビルダーがあります。“リーバ”なのか“リーヴァ”なのか、日本語表記はわかりませんけど。どっちでもいいですが、イタリアの家具ブランドに“リーヴァ”というのがあるから紛らわしい。関係あるのかないのかは、知らんけど。
その“リーヴァ”を初めて知ったのは97年頃だったと思います。レンジローバーのプレゼンテーションで、デザインの責任者ドン・ワイアット氏が来日してこう言いました。「コックピットのデザインはリーヴァからインスパイアされました」と。
当時の私は、この話を聞いてチンプンカンプン。「リーヴァって何よ?」って具合です。でもって負けず嫌いの性格なので、めちゃくちゃ調べました。コモ湖の名前を知ったのもその時です。
それから10年経ったある日、フェラーリとリーヴァのコラボパーティに呼ばれ、そこでスピーチをして欲しいと頼まれました。そこで、すかさずレンジローバーの話をしたのを覚えています。すると、後日“パーフェクトボート ”というボード専門誌から連絡があり、LYUCOMPANY(*Riva Yachtの日本正規ディーラー)の方が九島さんにぜひボードに乗ってもらいたい!と言ってます、と伝えられました。聞くと、コラボパーティの私の話を後ろの方で聞いていたとか。
ということで、それから数日後三浦半島のシーボニアでリーヴァに初乗船しました。もちろん、操船も。その間にボート免許を取ってましたから。今では日本ボート・オブ・ザ・イヤーの選考委員もつとめさせていただいております。
それにしてもこういうのって縁ですよね。どこで誰が聞いているかわかりません。発信するって大切ですね。とはいえ、口は災のもとともいいますから、世の中難しいです。
記事:九島辰也
by Ryota Takahashi | Mar 29, 2021 | FOOD / フード, IAM NEW
春を告げる鳥 復活祭のコロンバ
Portaprimavera. La Colomba pasquale
カーニバルが終わると、スーパーや菓子店の一番目立つところに並び始めるのが卵型のチョコレート、その次に目につくのがコロンバだ。コロンバ・パスクアーレとも呼ばれる、鳩(コロンバ)をイメージした復活祭の発酵菓子である。「え、どこが鳩?」と思うほど、かなりデフォルメされた鳩だが、1930年代にミラノの製菓会社モッタがクリスマスのパネットーネの生地を活かせないかと編み出したのが始まりである。パネットーネと同じであれば、型はなるべく凹凸がなく均一に火が入るようなフォルムが望ましい。ギリギリ「鳩かも」と思える妥協点があの形だったのだろう。ともあれ、鳩をかたどった復活祭の菓子はシチリアなどにもあり、鳩をこの時期の菓子のモチーフにすること自体はかなり昔からあったという。
よく語られるのは、聖コロンバーノ(コロンバヌス)にまつわる伝説だ。6世紀のアイルランドに生まれたコロンバーノは、キリスト教修道士として守るべきこと行うべきことを規範としてまとめ、ヨーロッパ各地に修道院や教会を設立した人物である。コロンバーノがローマ教皇の謁見を求めて南下の旅をしていた時、ミラノを訪れ、当時イタリアを支配していたロンゴバルド(ランゴバルド)族の王アジルルフォ(アギルルフス)と王妃テオドリンダの食客となった。当時、イタリア北西部の司教たちは、東方教会とローマ教皇がコンスタンティノープル公会議(553年に開催された第5回会議)で採択した結論に反発し、政治問題に発展していた。アジルルフォ王はコロンバーノにこの問題の解決を依頼、コロンバーノは西側(コモ)と東側(アクイレイア)の司教を話し合いの席につけることに成功。王はコロンバーノに謝意を表し、祝宴を設けたのだが、折しも時節は四旬節(肉食を断ってキリストの復活を祈る時期)、食卓に並んだ数々の肉料理にコロンバーノは手をつけなかった。それを侮辱ととった王と王妃がコロンバーノを責めたところ、食卓上の料理の鳩が白い羽を羽ばたかせて飛び立っていったという。この逸話から、聖コロンバーノの象徴は鳩となり、復活のシンボルともされ、復活祭に鳩をかたどった菓子を供えるようになったと言われる。ちなみに、食卓にあった鳩料理が、鳩の形をした甘いパンになったという説もある。
聖コロンバーノは登場しないが、やはり、ロンゴバルド族の時代を舞台にしたもう一つの伝説では、初代の王となったアルボイーノ(アルボイン)が3年の包囲ののち入城を果たしたパヴィアで、地元のパン職人から鳩の形をした甘いパンを「復活祭に捧げる平和のシンボル」として贈られたことに由来するという。残忍な性格だったとされるアルボイーノにコロンバを平和の印だと贈るのは、嫌味と捉えられればそれこそ斬首に処される危険がある。だから、実際にはそのような出来事はなかったのかもしれないが、バルバロ(バーバリアン、蛮族)と呼バレるロンゴバルド族によるイタリア征服は、イタリアの歴史にとって暴力的非文化的な時代の始まりを意味する。それゆえに平和のシンボル=鳩が重要なアイコンとなったという希望を込めた伝説なのだろう。
20世紀のコロンバは、先にも述べたようにミラノのMotta社が作り出した。パネットーネと同じように全国区の菓子として成長させるにはどうしたらいいかと考えた当時の社長アンジェロ・モッタは、出来上がったコロンバを著名な作家やジャーナリストに送り、効果的な宣伝文を考えて欲しいと依頼した。それに答えた科学者であり医者であったエルネスト・ベルタレッリは「コロンバはノアの時代にまで遡る平和の印であり、仔羊よりもずっとシンプルで血なまぐささがない。このコロンバは平和と春を意味するお菓子だ」と書いている。こうしたMotta社の大々的な宣伝のおかげで、コロンバの知名度は高まり、ミラノ発祥の菓子として定着。ロンバルディア州のP.A.T.(Prodotti Agroalimentari Tradizionali イタリア農林食品政策省が定める州ごとの伝統的食品)にも認定されている。
コロナ禍の今、それまでは製菓会社やパスティッチェリア、ベーカリーがコロンバの作り手だったのが、そこに星付きレストランも参入している。通常の営業ができない今はテイクアウトやオンラインショップで次々と新商品を発表しているところが多いが、ファインダイニングには人手と高い技術があるゆえ、コンテンポラリーでハイレベルなコロンバが登場しているのだ。例えば、アブルッツォの三つ星リストランテ「レアーレ」のオーナーシェフであるニコ・ロミートの「ラ・コロンバ・ニコ・ロミート」は、吟味した素材を使い、バターの一部を乳化させたシチリアのオーガニック・アーモンドに替え、ごく軽い生地に仕立てている。また、ピエモンテの二つ星「ヴィッラ・クレスピ」のアントニーノ・カンナヴァッチュオロのオンラインショップでは、オレンジとレモンの柑橘をたっぷり使ったクラシック・コロンバのほか、オレンジとチョコレート、リモンチェッロの三種類を販売しているが、そのパッケージの華やかさに目を奪われる。ディテールにもこだわった斬新なコロンバが生み出されたのも、今回のパンデミックの功罪の一つかもしれない。
ニコ・ロミートのコロンバ
https://www.nikoromito.com/negozio/
アントニーノ・カンナヴァッチュオロのコロンバ
https://shop.antoninocannavacciuolo.it
記事:池田愛美
by Ryota Takahashi | Mar 26, 2021 | DESIGN / デザイン, IAM NEW, LIFESTYLE / ライフスタイル
と
東京に恋をした書師ルカ・バルチェッローナと文字
東京への愛と、東西の異なるカリグラフィーへの愛をルカが語る。
A, B, C… e tutte le altre lettere di Luca Barcellona, il calligrafo innamorato di Tokyo.
Luca ci racconta del suo amore per Tokyo e per la calligrafia dallo shodo a quella occidentale.
by Ryota Takahashi | Mar 24, 2021 | AUTOMOTIVE / 自動車業界, IAM NEW
FIAT 500
フィアット500というクルマがあります。500はイタリア語で“チンクエチェント”。なのでクルマ好き同士では略して“チンク”なんて呼ぶのがフツーです。
このクルマはイタリア人にとって特別な存在だそうです。かなり前のことですが、雑誌LEONのカバーモデルとして有名なジローラモ氏とクルマ談義をした時、そんなことを言っていました。「物心ついた頃に家に古びたチンクがあり、それをレストアしながら運転技術を磨くのがイタリア男子の通る道」だとか。この場合1950年代とか60年代の初代モデルですが、生活に根付いているのが分かります。
そんな特別な存在ということだからでしょう。チンクはメゾンブランドのグッチや、最高級ボートメーカーのリーヴァとコラボしたモデルを販売してきました。通常、この手のブランドとコラボするのであれば、イタリアにはフェラーリもありますし、ランボルギーニもあります。マセラティもそうですよね。アルファロメオだっていいと思います。でもなぜか大衆車のフィアット500。そこはやはり日本人の我々にはわからない“ナニか”があるのでしょうね。気になります。
そんなチンクをベースにパワーアップしたモデルがあります。アバルト595/695シリーズです。レースで勝つことを目的に生まれたこのブランドがつくるモデルはまさにレーシーな仕上がりとなります。とにかく速い! で、それをベースにしたコラボモデルもいくつか存在します。しかも、おもしろいことにコラボ相手はフェラーリやマセラティ。同じFCAグループとはいえ、「クルマブランド×クルマブランド」ってなんか不思議ですよね。なんでもありか?
話をフィアット500に戻すと、イタリア国内には驚くほどたくさん走っています。個人所有もそうですが、企業が自社ブランドの広告塔として使用したりしてます。そんなクルマを見かけるとなんか嬉しくなります。「チンクは愛されているんだなぁ」と。あ、言い忘れましたが、私もチンクユーザーでございます。
記事:九島辰也
by Ryota Takahashi | Mar 22, 2021 | FOOD / フード, IAM NEW
トスカーナ生まれのアートなジン「ジンアルテ」
フィレンツェを代表するファッション・デザイナー、ロベルト・カヴァッリはファッション同様ワインと食を馬を愛し、トスカーナの田園地帯に暮らすことを好んだ趣味人だった。彼が馬を育て、ワインを作るために購入したワイナリーは現在息子であるトッマーゾ・カヴァッリが管理、運営しキャンティ・クラッシコを中心としたワイン作りに精を出しているが、近年リリースしたのがアーティステッィクなジン「ジンアルテ」だ。
フィレンツェから国道222号線、いわゆるキャンティ街道を南下すること約30分。キャンティ・クラッシコ・エリアでは「黄金の盆地=コンカ・ドーロ」と呼ばれるパンツァーノ・イン・キャンティの一角に「テヌータ・デッリ・デイ Tenuta degli Dei」はある。これは日本語にするなら「神々の農園」となるが、それはフィレンツェを代表するかのファッショ ン・デザイナー、ロベルト・カヴァッリに由来する。彼は1970年代にこの農園を購入。以 前からカヴァッリ Cavalli=馬という名字ゆえか馬に対する愛着が非常に強く、ファッション・ビジネス同様の情熱を注いで馬を飼育、競走馬として販売するビジネスを始めたのだった。
当時ロベルト・カヴァッリから片時も離れることなく常に寄り添っていたのがジャーマン・ シェパードの「ディドーネ・デッリ・デイ」。ロベルトも愛情をこめて「ルーポ Lupo= 狼」と呼んで愛したのだが、ディドーネがこの世を去ると生前の面影を偲び、この農園に愛犬の名前をつけたのだった。現在はロベルトの息子トンマーゾ・カヴァッリ Tommaso Cavalliが「テヌータ・デッリ・デイ」を受け継いでいるが馬への愛情は父親譲り。若い頃か ら父ロベルトともに馬を飼育し、ワイン作りの現場に携わって来たトンマーゾはファッショ ンの世界ではなく田舎暮らしを選び、24時間全てを馬とワイン、そしてアートに注いでい る。美しい自然の中でストレスフリーで育てられた馬は1才半を迎えると売りに出され、やがて多くのファンが見守る中華々しく競走馬としてデビューする。一体何十頭、何百頭の競 走馬がこの「テヌータ・デッリ・デイ」に生まれ育ち、世界へと旅立っていったのだろう。
ワイン作りにおいては有名醸造家ルカ・ダットーマを招聘し、トスカーナの代表品種サン ジョヴェーゼだけでなくカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローといった品種も栽培。いずれもハイクオリティな3種類の赤ワインを製造している。しかしマッテオが近年最も力を入れ、製作に力を注いでいる最新作がトスカーナ産のボタニカル(植物)を使用したアーティ スティックなドライ・ジン「ジンアルテ Ginarte」だ。
トンマーゾが目指したのはトスカーナのテロワールだけでなく文化や歴史も反映したジン作り。アーティスティックな才能もまた父親譲りのマッテオはルネサンスの芸術家たちが絵具として使用した13種類のボタニカル(植物)をジン作りに採用している。「ジンアルテ」の原材料であるネピテンサ=Nepitella、ベニバナ=Cartamoといったトスカーナに自生する植物は、バルジェッロ美術館に多数収められているロッビア工房 Robbiaの彩色テラコッタの原材料でもある。また、パッケージングには画家や写真家、デザイナー、ストリート・ アーティストらを起用し、ボトルを白いキャンバスに見立てて自由に創作する機会も与えている。昨年からはメキシコ政府の協力により、フリーダ・カーロをデザイン・モチーフにした限定版を発表。これはフリーダ・カーロが生前に追求した多様性、創造性、象徴性といっ た現代にも通じる概念を通じ、ジンを媒介にアートの世界を旅するという画期的なプロジェクトなのだ。
アートに囲まれた「テヌータ・デッリ・デイ」でトンマーゾとともに「ジンアルテ」を味わう。爽やかな中に甘さも漂うジュニパーベリー=ネズの実特有の香りだけでなく、セージやローリエなどいわゆる地中海性灌木=Macchia mediterraneaの香りがあちこちに隠れている。実に華やかなジンなのだが、トンマーゾが目指したのは華やかさが前面に出るのではなく、あくまでも辛口でキレのあるドライなジン。ミシェラツィオーネ Miscelazione=カク テルとしての汎用性を重視し、アーティスックなジンの世界を広く楽しんでほしいという。 近年イタリア、特にトスカーナではミクソロジー・ブームの高まりもありジンの生産が非常に盛んだが、それはトスカーナのジェニパーベリーが非常に高品質で、世界のジン・メーカーに珍重されていることにイタリア人自身も気づいたからだ。続々と登場するメイド・イ ン・イタリーのジンは日本にも徐々に登場しつつあるが、次はトンマーゾ・カヴァッリが作る「ジンアルテ」に注目したい。
https://www.ginarte.it/
記事:池田匡克
by Ryota Takahashi | Mar 19, 2021 | IAM NEW, LIFESTYLE / ライフスタイル
キアラの音楽にある日本
イタリア・アモーレ・ミオ!2019への参加が彼女自身のアルバム「Bonsai」へ与えた影響について語ります。
Il Giappone nella musica di Chiara
Chiara ci racconta di come aver partecipato ad Italia, amore mio 2019 abbia influenzato il suo ultimo lavoro “Bonsai”.