Storie di passione italianaイタリアに恋しちゃう物語

人生は祭りだ Vol08ヴェネツィア:3歳の息子がホテル従業員用のトイレで、無断で用を足していた話

2015年10月。ミラノでの暮らしも半年が過ぎ、家族もだいぶイタリアに馴染み始めた頃。3歳の息子を、パパと二人での旅に行こうと誘うと、いいよ、という意外な返事。行き先はどうしようか。ヴェネツィアなんかいいんじゃない。二泊三日くらいで。今こうして書くと贅沢に聞こえますが、ミラノに暮らしていれば電車で1時間半くらいの距離だし、男同士だから泊まるのは安い民宿でいいかと、気楽にいけました。とはいえ、まだ3歳。当時息子は、割と重い卵アレルギーもあったので、冒険は冒険だった。

二人でミラノ中央駅から新幹線のようなものに乗り込む。妻が色々と心配しておにぎりを持たせてくれた。イタリアの新幹線でおにぎりを食べている3歳、なかなかシュール。列車はやがて、というか、割とあっという間にヴェネツィアに着いた。

ヴェネツィアの街は、入り組んだ路地のせいか、電波のせいか、google mapがバグりがち。男二人で路地を彷徨い歩いた。父と幼い子供の二人組は、訳アリにも見えるのか、どこに行っても手厚く扱われ、優しくされ、レストランではサービスされ、本当にありがたかった。息子は、初めてみる海上都市に素直に喜び、大きな船は本物の海賊船だと信じて震え上がり、日本から持ってきたおもちゃの釣り竿で運河で釣りをしたら、誰も釣りなんかしないせいか、面白いように雑魚が釣れた。とにかくそんな感じに、初めての男子旅はとても楽しく、心地よく、過ぎていった。

帰る日の朝、ちょっとした事件が起きた。その民宿は開放的なざっくりとした宿で、シャワーとトイレは共同。ワンフロアに5部屋ほど寝室があり、我々以外には、ドイツから来た風のバックパッカーたちが泊まっていた。どの部屋も、寝る時以外は豪快に扉が開いていて、中でゴロゴロしている人たちが丸見え。チェックアウトの手続きを一通り終えた時、あれれ?息子が居ない!消えた。チョロチョロと動くタイプなので、誰かの部屋に入ってしまったか?高層階だったのでベランダから落ちたりしたら大変だ。と焦った。従業員の人も一緒になって探してくれた。しかし見つからない。バックパッカーたちまで一緒に探してくれた。とその時、チェックアウトしていたカウンターの後ろの従業員用の扉がガチャリと開いて、ふぅーっと言いながら、息子がフルチンで現れた。「うんち」

 

教訓:旅先で、小さな子どもから目を離してはいけない。当たり前だけど

 

以来、年に2〜3回は息子と二人で旅をするようになりました。楽しんでくれたとおもうと嬉しい。いまや日本国内がほとんどですが、初回がヴェネツィアというのは恵まれていたなと、ありがたく思っています。

ノリノリで出発。男二人でヴェネツィアへ

 

車内ではおにぎり
どこの国にいるのか分からなくなりそう

 

写真上:細い路地を彷徨い歩く
写真下:本物の海賊船だと思って本気で怖がる息子

 

 

志伯健太郎
クリエイティブディレクター。慶應SFC、イタリア・ローマ大学建築学科で建築デザインを学び、2000年電通入社後、クリエイティブ局配属。数々のCM を手がけたのち、2011年クリエイティブブティックGLIDER を設立。国内外で培ったクリエイティブ手法と多様なアプローチで、企業や社会の多様な課題に取り組む。 glider.co.jp