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最新グルメ情報7919世紀の飛脚御用達トラットリア、パルマの「コリエリ」

19世紀の飛脚御用達トラットリア、パルマの「コリエリ」

トラットリアとは本来街道筋にあり、旅人や馬を休ませるための食堂兼旅籠で、郷土料理を食べさせる店であった。そうした意味では1800年代に創業したパルマの「トラットリア・コリエリ Trattoria Corrieri」は真のトラットリアである。というのも、その名は当時のパルマ公国女公マリア・ルイーザ(マリー・ルイーズ 1791〜1847)時代にコリエリたちが利用していたことに由来するからだ。コリエリとは馬を使って街を巡り、郵便や親書などを届けた飛脚というか早馬というか、現代ならば宅配便業者に相当するかもしれない。コリエリの語源は「走る Correre」であり、客を乗せた御者「カレッティエレ」同様、旅することが多かった彼らはいく先々に定宿や馴染みの食堂を持っていたのではないかと思われる。ことパルマに関していえばこの「トラットリア・コリエリ」がそうした馴染みの食堂であったのだろう。

前菜の華はなんといってもマニュアル・スライサーの名機ベルケルを使った手切りのプロシュット、サラミ類だ。サルーミの聖地パルマだけにメニューに見てみるとプロシュット・ディ・パルマDOPはじめ、クラテッロ・ディ・ズィベッロDOP、クラッタ、チッチョリ、チッチョラータ、ストロルギーノ、スパッラ・コッタ、スパッラ・クルーダ、、コッパ、パンチェッタ、サラーメ・コンタディーノ、サラーメ・フェリーノ、ストロルギーノなどなどなんと14種類。

こうした生ハム、サラミ類やチーズは何よりも切りたて、割立てで乾燥していない、コンディションがよいものこそが極上で、旅すると味が変わってしまうというのはあながち嘘ではない。こうした薄切りサラミを揚げたて熱々のトルタ・フリットに乗せ、脂が溶け出したところを食べるのはたまらない。

サルーミと並ぶエミリア地方の華といえばもちろん手打ちパスタだが、名物は赤白緑のイタリア国旗をイメージした「3種類の詰め物パスタトルテッリ」。緑はほうれん草とビエトラ、白(黄色)はジャガイモ、赤(オレンジ)はカボチャを生地に練りこんである。味付けは溶かしバターとパルミジャーノ・レッジャーノDOPで、熱いパスタにふりかけるとなんともいえない芳香が漂う。こうした食べ方は実はパルミジャーノの香りを味わうための料理なのではないかと思う。その究極系が「パルミジャーノのリゾット」で、作ったことがある人ならお分かりかと思うがパルミジャーノだけで味を作り、最後まで飽きずに美味しく食べさせるのは容易ではない。見た目からして究極的にミニマルな料理であり、使用食材は米、タマネギ、パルミジャーノのみ。「パルミジャーノというチーズは劇的に料理の味を変えてしまう」とはマッシモ・ボットゥーラの言葉だが「トラットリア・コリエリ」のリゾットもまた、パルミジャーノが持つ旨味、芳香、粘度が作り出した、これ以上手を加えようがない郷土料理の完成系なのだ。


www.trattoriacorrieri.it
Str. Conservatorio, 1 Parma
Tel0521-234426

 

 

記事:池田匡克