Storie di passione italianaイタリアに恋しちゃう物語

最新グルメ情報76フランスのセンスとイタリアのスピリット。美しく滋味深いパスティッチェリア

フランスのセンスとイタリアのスピリット。美しく滋味深いパスティッチェリア

イタリアのお菓子はシンプルで素朴、そして味わいがしっかり、というのが一般的。それでも、ミラノなど北イタリアではフランスに近いという地の利とインターナショナルな感覚に長けていることから、姿形も美しく洗練されたお菓子を作る職人はいる。逆に言えば南に行くほどイタリア伝統色が強くなり、いわゆる現代的なパスティッチェリアは少ない。それはローマも然りである。そこへ、世界中からやってくる舌の肥えた旅行者も満足できるハイレベルなパスティッチェリアが誕生した。その名は「フェデリコ・プロドン・パティスリー」である。

パティスリーとフランス語を使うお店はイタリアでも少なくないが、その大半はそこに深い意味はなさそうな店構えや内容である。だが、フェデリコ・プロドンはフランス菓子を学び、敬意を表してあえてパティスリーと名乗る。元々はまったく違う仕事をしていたのだが、お菓子の世界への思いが抑えられず、前職を辞め、パスティッチエレの道を選んだ。独学で技術を磨き、2014年にはTV番組の「Bake Off Italia」で3位になり、一気に知名度を得た。その後、ローマの料理学校「A Tavola con lo chef」の講師や、製菓材料メーカーAgrimontana社、チョコレートメーカーDomori社などとコラボレーションする傍ら、お菓子の本も刊行している。

そんなフェデリコ・プロドンの現時点での集大成とも言えるのが、バチカンのすぐ近くにオープンしたこのパティスリーだ。自らの名前を冠したのは、これまでの経験から得たさまざまなこだわりをつぎ込み、10年来の夢を実現できた喜びを表現しているのだという。「単に甘いだけではない、甘すぎない絶妙のバランスを求めるのが私のスタイル。この店にならぶお菓子はどれも私のフィロソフィとアイディアを形にしたものばかりだ」。

店は4つのセグメントに分かれている。一つはこれまでに集めてきた書籍や書類を納めたライブラリー、収集してきたアートを飾ったギャラリー、そしてもちろんメインである生菓子や焼き菓子を販売するパスティッチェリア、壁の色をいわゆるティファニーブルーに近い、ニュアンスのあるコバルトブルーに統一している。さらにエクステリアには20席ほどのテラス席を備えた。

ガラスケースに並ぶケーキはどれもフランス菓子的な端正さとイタリア菓子的な力強さに溢れている。中でもフォレスタ・ネーラ(黒い森)と呼ばれるケーキはとろりとかかった艶やかなチョコレートが魅惑的。中にはキルシュを含ませたココアビスケットにチェリーのジュレを忍ばせた生クリームムースが隠れている。イタリア人にも人気があるドイツ・オーストリアのケーキ、シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテをプロドン流にアレンジしたもので、砂糖を控え、シズル感のあるフォルムでオリジナリティを出しているという。そのほかザッハートルテ、パヴロヴァといったおなじみのケーキも全てに遊び心というひねりを加えている。

カントゥッチやバチ・ディ・ダーマなどオーソドックスなイタリアの焼き菓子、アラゴスティーネ、カンノーリなどのミニョンもバラエティ豊かに並ぶ。サン・ピエトロ大聖堂周辺は土産物店や観光レストランが多いが、このパティスリーのおかげで豊かなティータイムが楽しめそうだ。

Federico Prodon Patisserie
Vicolo del Farinone, 19 Roma
Tel.+39-06-89413947
6:00〜18:00 無休

 

 

記事:池田愛美