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最新グルメ情報75イル・パラージョの新シェフ、パオロ・ラヴェッツァーニの挑戦

イル・パラージョの新シェフ、パオロ・ラヴェッツァーニの挑戦

フィレンツェを代表するラグジュアリーホテル「フォーシーズンズ・ホテル・フィレンツェ Fouaseasons Hotel Firenze」のメインダイニング「イル・パラージョ Il Palagio」に注目の新シェフが就任した。ブラジルで10年過ごした後祖国イタリアに戻ってきたパオロ・ラヴェッツィーニ Paolo Lavezziniだ。ラヴェッツィーニはそれまで「イル・パラージョ」のエグゼクティブ・シェフを長年勤め、ミシュラン1つ星を維持してきたヴィート・モッリーカに代わる新シェフということで内外から多くの注目が集まった。ラヴェッツィーニはイタリア国内ではさほど有名ではないかもしれないが、その実績は錚々たるものがある。

若い頃はパリの「プラザ・アテネ」でアラン・デュカスとともに働き、イタリアに戻るとフィレンツェが誇るミシュラン3つ星「エノテカ・ピンキオーリ」でさらに研鑽を積む。その後ブラジルに渡りリオデジャネイロの「ホテル・ファザーノ」でキャリアを積んだ後は「フォーシーズンズ・ホテル・サンパウロ」のエグゼクティブシェフとして活躍。2019年にはメインダイニング「ネート」にガンベロロッソ・インターナショナルの最高評価である3本フォーク「トレ・フォルケッテ」をもたらした。エミリア・ロマーニャ出身のラヴェッツィーニにとってフィレンツェは第二の故郷のようなものだ。フランスやブラジルでの経験をラヴェッツィーニはこう語る。

「フランスでは技術面を学び、ブラジルではガストロノミーという観点で大いに刺激を受けました。ブラジルのサンパウロではローマとほぼ同じぐらい、数百万人規模のイタリア人が住んでいてイタリア人社会を構成しています。そこではさまざまな手打ちパスタはもちろんピッツァからコトレッタ・アッラ・ミラネーゼまで、ありとあらゆるイタリア料理が根付いていました。サンパウロは世界で一番一人当たりのピッツァの消費量が多い都市であり、外国から見たイタリア料理とはどんなものか?ということをあらためて認識しました。」


前任者ヴィート・モッリーカは「イル・パラージョ」の名前を国際レベルに押し上げ、出身地であるシチリアのテイストとトスカーナ料理のコンセプトを見事にマッチングさせ、ガストロノミー・レベルにまで押し上げた功労者。その後釜としての責任は重いが、期待もまた大きいことは事実だ。現在世界のガストロノミー界ではフランス料理、イタリア料理、スペイン料理といったいわゆる旧大陸料理の枠組みを超え、北欧料理、南米料理、アジア料理、日本料理と、あらゆる国でさまざまな料理経験を積み、国境を超えたオリジナル料理を出すシェフとレストランが評価されている。それはフードエクスペリエンスという観点から見た新しい可能性であり、イタリア人シェフにもそうしたエッセンスが求められているのは間違いない。それだけにラヴェッツィーニがブラジル的インスピレーションをどのようにイタリア料理に表現するのか、は極めて興味深い。最後にもう一度ラヴェッツィーニの言葉を引用しておきたい。

「ブラジル的エッセンスとは具体的にいえば酸味、唐辛子に代表される辛さ、食感、風味など。ブラジルで人気があったイタリア料理はパッパ・アル・ポモドーロのようなシンプルな料理やバジリコを使ったジェノヴェーゼなど。そうした外から見たイタリア料理とはわれわれイタリア人にとってはイタリア料理の再発見であり、わたしがブラジルで過ごした時間はきっと大いに役にたってくれるものと信じています。」


フォーシーズンズ ホテル ・フィレンツェ
Forseasons Hotel Firenze
Borgo Pinti,99 Firenze
Tel055-2626450
http://www.fourseasons.com

 

 

 

記事:池田匡克