ヴェネツィアの名門「ベルモンド ホテル チプリアーニ」に新シェフ就任
ヴェネツィアを代表する名門ホテル「ベルモンド ホテル チプリアーニ」新エグゼクティブ・シェフに「ノーマ」帰りのリッカルド・カネッラが就任した。
1985年パドヴァに生まれたリッカルドは、ホテル学校卒業後に故グアルティエロ・マルケージの「アルベレータ」でプロの料理人としてのキャリアをスタートさせる。その後実家のすぐ近くにある3つ星「レ・カランドレ」のシェフ、マッシミリアーノ・アライモの元でさらにキャリアをブラッシュアップすることになる。
「マッシミリアーノからはたくさんのことを学びました。彼は遊び心あふれる非常に個性的な人間で、アイディアからではなく感情から料理を生み出すことができるシェフなのです。」と語る。その後北欧を目指したリッカルドはまずノルウェーのフィヨルドにあるビストロで働いたあとデンマークに向かい、2014年9月に「ノーマ」の厨房にインターンとして迎えられた。「ノーマ」のキッチンではまず、イタリア人は怠け者で英語も下手だという偏見と戦うことからはじめたという。その後努力を重ねたリッカルドは第一次「ノーマ」閉店までスーシェフを務め2018年に再開した「ノーマ2.0」でもレネの右腕として活躍。2022年3月に満を持して故郷であるヴェネトに戻り「ベルモンド ホテル チプリアーニ」のエグゼクティヴ・シェフに就任したのだ。
「ベルモンド ホテル チプリアーニ」には現在「チップス・クラブ」「オーロ」「イル・ポルティッチョーロ」「ガッビアーノ・バー」「カフェ・サン・ジョルジョ」と5つのレストランがあるが、その全ての料理をリッカルドが見ることになった。特に「イル・ポルティッチョーロ」はサンマルコ広場から専用ボートで横付けすることが可能な、眺めの良いテラス・レストラン。目の前にはサン・ジョルジョ島と青いラグーンが広がり、ヴェネツィアのラグーンを渡る風を頬に受けながら食事するひとときは忘れらない旅の記憶となるはずだ。
リッカルドが提案するのは、ヴェネツィア伝統料理に新たなインスピレーションを加えた、いまだかつて誰も創造しえなかった新ヴェネツィア料理。例えば「リ・ソットアックア」という料理は、アドリア海の新鮮な魚介類にハーブペスト、海藻オイルを使ったリゾット。料理名は「リゾット」と「海底」のWミーニングであり「海の深部に生息するプランクトンが皿の表面に浮き上がってくるような料理」とリッカルドは語る。
また、3種類のトマトを使ったパスタ「アドリア海産ホンマグロのカラマラータ」やシーフードサラダ「アマーレ・サラダ」、牡蠣、手長海老、赤エビ、ホタテなどを永世定番料理「クルード・ディ・マーレ」やアマルフィ・レモンをくり抜いて中にソルベを詰め込み、甘酒、グリーンオリーブの塩で味付けした「リモーネ・アマルコルド」も一度試したい料理。北欧のエッセンスをヴェネツィア料理に持ち込むという、壮大なスケールの世界観。マルケージからレネ・レゼピへと渡されたバトンをヴェネツィアに持ち帰って新しい料理を創造するリッカルドの仕事ぶりに注目が集まる。
https://www.belmond.com/hotels/europe/italy/venice/belmond-hotel-cipriani/dining
記事:池田匡克