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最新グルメ情報72コンテンポラリー・ピッツァの新名所、ローマのど真ん中に誕生

コンテンポラリー・ピッツァの新名所、ローマのど真ん中に誕生

5月12日、パンテオンのほど近くのローマ中心地にピッツァ・コンテンポラリーの新スポットが登場した。「Brucio – Fuoco e Farina」は、由緒あるパラッツォの意匠を生かしたレトロな雰囲気の中で、ピッツァシーンの最先端を提供する。
グリーンとゴールドをインテリアの基調とした店内には50席、さらにオープンエアのテラス席が30席、三つに分かれた店内の中心にはピッツァ窯が鎮座する。観光都市であるローマには星の数ほどのピッツェリアが存在するが、そのどの店とも違う、新しい感覚のピッツァを目指して若い世代が集結、ツーリストはもちろん、地元の人々に楽しんでもらいたいと始動したという。

コンテンポラリー・ピッツァは、20世紀終わり頃、北イタリアのヴェローナ近辺で萌芽し、当初は高みの見物をしていた伝統ピッツァの本拠ナポリが、やがてその動きに刺激されて、伝統を大切にしながらも生地の改良、素材の吟味、クラシックとは異なるトッピングの組み合わせに取り組んだことから、全国へと波及した。
昨今、ガンベロ・ロッソのピッツェリア・ガイドで最も高評価を得ているのは、ナポリ近郊カゼルタのフランコ・ペペが率いる「ペペ・イン・グラーノ」だ。彼の手法にインスパイアされたピッツァイオーロは多く、この「ブルーチョ」のピッツァイオーロ、アレッサンドロ・アヴァートもその1人である。加水率は70%、香りのいいウンブリア産の小麦粉を使う。トッピングは、クラシックなマルゲリータなどを除いて、キッチンを任されているジョルジョ・ファーガが考え出したオリジナル。

「ブルーチョ」はピッツァだけでなく料理も、とりわけフリットに力を入れている。同店があるコッペッレ広場はその昔メルカートが立ち、そこに集まる人々を相手にした小腹満たしのフリットを食べさせる屋台があったことから、その伝統を現代風に蘇らせようというのだ。
スップリー(ライスコロッケ)、じゃがいものクロケッテ、ヴィニャローラ(アーティチョークとそら豆の煮込み)のフリッタータなど懐かしのストリートフードが揃う。そのほかにも揚げじゃがいものスパゲッティにタコ煮を詰めたもの、ローマ風バッカラ、フリット盛り合わせ、もちろん、ピッツァ・フリッタもある。

また、“スピッキ”と呼ばれる、一切れサイズに切り分けたピッツァ生地をブルスケッタに見立てて、王道のフレッシュトマトマリネのほか、牛肉のタルタル、ポルケッタ、カモミール風味の赤エビをトッピングしたアペリティーヴォにぴったりのスナックもある。
ピッツァは伝統に則った“白”、”赤“のカテゴリーのほか、”広場から“というスペシャルカテゴリーがある。“白”には例えば、スカローラ&アンチョビ、ボスカオイーラ、スフォルマート(ベシャメルソース、じゃがいも、フィオル・ディ・ラッテ、プロシュート・コット、パルミジャーノ、ナツメグ)、カルボナーラ。“赤”にはマルゲリータを始めとするトマトソースのオーソドックスなアイテムの他にアマトリチャーナもある。

“広場”のお勧めは、マルゲリータ・ブルーチョ(ダッテリーノ・ミニトマトの自家製ソース、水牛のストラッチャテッラ、バジリコ)の他、ローマ風サルティンボッカ、ジェノヴェーゼ、イカとグリンピース、コッペッレのヴィーガンなど。名前だけではピッツァなのか何なのかわからないものもあるが、それだけピッツァと他のイタリアの料理との垣根がなくなってきていることを端的に示していると言えるだろう。
こうしたコンテンポラリー・ピッツァの店では、デザートにも力を入れるのが当たり前になりつつある。リストランテで出されるような美しいデザートで最後まで高い満足度を維持させるのだ。
お腹をいっぱいにするためのピッツァは今は昔、カジュアルな雰囲気ながら料理としてブラッシュアップされたピッツァを楽しめる店はますます増えていくだろう。

Brucio
Piazza delle Coppelle, 8 Roma
Tel.06-89024862

 

 

記事:池田愛美