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最新グルメ情報68フィレンツェの歴史と最先端ミクソロジーを同時に楽しむDe’ Bardi

フィレンツェの歴史と最先端ミクソロジーを同時に楽しむDe’ Bardi

近年続々と増えているミクソロジーカクテルのバー。毎年「フローレンス・カクテル・ウィーク」が開催されるフィレンツェもミクソロジー界では要衝である。今年前半の話題の一つは、女性バーテンダー、ヴェロニカ・コスタンティーノがバーマネージャーに就任した「De’ Bardi」の誕生だ。
カラブリア出身のヴェロニカはローマでキャリアをスタート、ミクソロジーの面白さに目覚めてテクニックと感性を磨き、cucina liquida(飲む料理)というコンセプトでインフュージョンを中心に、さまざまな素材の香り、味わいを引き出してドリンクを構築する。フィレンツェに移ってからは、ミクソロジー&コンテンポラリーキュイジーヌのリストランテ「Guné」、ミクソロジー&コンテンポラリーピッツァの「Largo9」のバーマネージャーを務めた。どちらも料理とカクテルの力量が絶妙のバランスにあるスポットとして知られている。

そのヴェロニカが次に選んだ店も同様に、いや、それ以上に要素が高いレベルで凝縮した場所になるだろうと期待されている。4月にオープンし、今なお試験運転中だが、ヴェロニカのドリンクはもちろんのこと、料理、そしてロケーションがフィレンツェならではの歴史を背負っていることも、その期待の理由だ。
場所は、アルノ川の左岸、中世以前は川べりからすぐに岩山がそびえていたあたりで、時代が下がるにつれ少しずつ川幅が狭められて整地され、貴族のバルディ家の屋敷を中心にルネサンス時代に完成した街並みが今も残る。「De’ Bardi」はそのバルディ家が所有していた建物を利用し、最も古い部分は12〜13世紀に遡る塔、そして15世紀中頃の地震で再興されたという館が中心になっている。

バルディ家は、コスタ・サン・ジョルジョと呼ばれる岩山とそこから滲み出る湧き水を原資とし、切り出した石と水の商売で成功を収めて銀行家となった。「De’ Bardi」ではコスタ・サン・ジョルジョの岩と、今もなお浸み出す水、さらに深さ12mの井戸を見ることができる。岩の上には強化ガラスの床を敷き、井戸の上には2人がけの小さなテーブルを設えているのだ。石やレンガの壁も中世の時代そのままに残されており、ルネサンス以前の建物内の様子を十分に感じられる。

造りも独特で、メインエントランスこそバーカウンターを備えた天井高いホールだが、その先はいくつもの部屋に分かれ、コスタ・サン・ジョルジョの岩の形状に合わせて奥に行くほどやや高くなる。一番奥はレストランとなる予定で、地下にはワインを収納するカンティーナとトスカーナ料理とワインが味わえるワインバー。メインエントランスとはもう一つ別のエントランスはワインとハム・サラミなども販売するエノテカとして近日オープンする。中世の迷路のような空間を生かして幾つもの機能を組み合わせた、ラウンジバー・レストラン&エノテカというわけだ。

しかし、一番の“顔”は何と言ってもヴェロニカがクリエイトするミクソロジーと日本人シェフ、仲井裕三さんによるフュージョン・キュイジーヌである。仲井さんは「Largo9」でピッツァ職人ガブリエレ・ダーニが指揮する厨房に勤めていたが、ヴェロニカとともに「De’ Bardi」に移った。柚子や紫蘇、椎茸など日本の素材を積極的に使うヴェロニカのカクテルと、カレーやブリ大根など日本の味を自在にアレンジした皿のコンビネーションは絶妙のハーモニーを奏でる。
現在、メニューはシグネチャーカクテルが10種類、ドリンクとともに楽しめる料理は「モダン」すなわちフュージョンが4種類のほか、ハム&サラミまたは野菜ロールの「クラシック」がある。ドリンクをオーダーすると最初に供されるフィンガーフードのプレゼンテーションが華やかで、「モダン」の皿への期待が嫌が応にも膨らむ。フィレンツェで二つとないアペリティーヴォ体験を求むならぜひ足を運びたい新スポットだ。

De’ Bardi
https://www.debardiflorence.com

 

 

 

記事:池田愛美