ミクソロジーとフードのペアリングを徹底追及。一日のいつでも美味しいをカクテルを
イタリアのミクソロジーブームは衰えを知らない。シーズンごとに新しいカクテルを発表する五つ星ホテルが増え、ミラノやローマといった大都市ではミクソロジーを主役に据えたイベント企画も連日のように行われている。そんなムーブメントを牽引するバーレストランの一つ、ローマの「Metropolita」から早春のカクテルリスト”Vol.IV”が発表された。テーマは、一日のさまざまな場面、その時の気分に合うカクテル。いずれも最新のテクニックを取り入れた、オリジナルレシピに基づいている。
メトロポリタは、ローマ市街地北部、観光スポットからは離れているが、そのぶん地元ローマ人や、カクテル好きの外国人がわざわざ足を運ぶことで知られる。オーナーの一人である建築家が手がけた店内デザインはその名の通り多彩な文化を取り入れて、ヨーロッパ各地の雰囲気を漂わせながらもどこにもない独特の空間を作り出している。店内70席に加え、このほど新しくテラス席40席が完成、緑に囲まれた開放的なスペースで楽しむカクテルタイムはせわしない日常からのちょっとした逃避行といったところだ。
新作カクテルは、真空低温加熱に始まり、ミルク・ウォッシング、ファット・ウォッシングなどを駆使し、氷にもスパイスやボタニカルの香りを移すなど、シンプルなプレゼンテーションながら複雑で繊細な味わいが記憶に残るものばかり。また、パンデミック以降定着したテイクアウト志向にも合わせたレディ・トゥ・ドリンクにも対応しており、自宅であるいは散歩の合間にもカクテルが楽しめるのが嬉しい。
数ある新作の中でもユニークなのは、イタリアの伝統を感じさせる「Al contatdino non far sapere」(農家に教えるな)や、コロナ禍が生み出したイタリアの行動制限システム「Green Pass」(ワクチン接種済み、または回復者、または陰性を示す証明書)などと名付けられたカクテルだ。前者はペコリーノの香りを移したウイスキー、洋梨のジャムなどを使った一杯だが、ペコリーノと洋梨の組み合わせは農家が夢中になりすぎて農作業をしなくなるというほど美味しいという昔からの言い回しに発想を得たもの。アルコール度数高く、くっきりと強い味わいだ。後者はグアンチャーレの香りを移したメスカルやりんごの香りをインフューズしたウイスキーなどを合わせたカクテル。りんごジュースやレモンジュースがフレッシュな印象をもたらすが、胃の中が一瞬燃え上がるような強さも秘めているところが面白い。
カクテルと共にフードメニューもイタリア料理をベースとしながらもその枠に縛られず、世界各地のエッセンスを取り入れたラインナップとなっている。しっかりとボリュームのある料理からタパス(つまみ料理)まで選択肢もバラエティに富んでいて、アペリティーヴォタイムにはシェフおすすめの日替わりタパス4種類を盛った一皿(5ユーロ)も。土曜と日曜はブランチでアラカルトのほか、前菜、タパスまたは主菜、デザートのコース仕立て(22ユーロと25ユーロ)が選べる。
カクテルも料理もオリジナリティを追及し、そのペアリングにもこだわる。食べることに貪欲なイタリア人だからこそクリエイトできる世界、今後の展開が楽しみだ。
Metropolita
https://www.metropolita.it/
Foto by Alberto Blasetti
記事:池田愛美