Storie di passione italianaイタリアに恋しちゃう物語

最新グルメ情報51クチーナ・クレアティーヴァの注目店インキオストロ

クチーナ・クレアティーヴァの注目店インキオストロ

パルマ郊外にあるレストラン「インキオストロ Inkiostro」は以前からクリエイティヴなイタリア料理=クチーナ・クレアティーヴァを標榜してミシュラン1つ星に輝くなどすでにその名は知られていたが、昨年11月に新シェフ、サルヴァトーレ・モレッロ Salvatore Morelloが就任。さらに高みを目指すべくパワーアップして再スタートを切った。南イタリア、カラブリア州出身のサルヴァトーレ・モレッロはドイツのホテル・レストランやイタリア料理店でキャリアを磨き、パリの「アラン・デュカス」などを経てイタリアに戻った。10年以上イタリアを離れていた彼からすれば凱旋帰国であり、食の都として名高いパルマの名店でシェフに就任するということは新たな冒険の始まりであった。そのサルヴァトーレ・モレッロの最新料理を紹介したい。

「インキオストロ」は敷地内に隣接する「ホテル・リンク124 Hotel Link 124」のオーナーであるポーリ家が所有するレストランだ。コンテンポラリーアートが飾られたダイニングルームは窓が大きく取られており、自然光が差し込む明るい空間で最新のイタリア料理を楽しむことができる。シェフのサルヴァトーレ・モレッロは寡黙で哲学者のような空気を漂わせている。外国で学んだ最新の料理技術やトレンド、食材、調味料などをイタリア料理に還元し、新たな料理の創造に挑んでいるのだ。

最初に登場したのは「ブリ 海苔 青リンゴ」海苔で5日間マリネしたブリは、美しい緑色のソースとともにいただく。これはぽん酢、発酵させた青リンゴ、青リンゴのジュースとワサビを使った酸味が心地良い上品なソース。ブリにトッピングされているのはマリネに使った海苔で、つけあわせはキュウリのマリネ。それぞれが異なるナチュラルな酸味で調味されており、世界的なトレンドである発酵を実にうまく取り入れている。

肉料理は「子豚 落花生 赤だし」これはイベリコ種の乳飲み子豚を骨を外してから整形、低温調理でじっくりと柔らかくなるまで火を入れたもの。エノキのぽん酢ソテー、やズッキーニなどの野菜はギリシャ風のツァツィキソースとともに。肉はとろけるように柔らかく、しかし皮はカリっとクリスピー。同じ子豚からとったソースもよくあい、ほんの一口サイズなのでいつまでも豚の旨味が続く極上料理。

パスタは「ボットーネ 黒キャベツ トリュフ」ボットーネ=ボタンと呼ばれる手打ちパスタは、中にに牛肉の赤ワイン煮ブラザートが詰め込んである。これをブラザート、トピナンブール=キクイモ、黒キャベツの3食のソースとともにいただく。トッピングはシェフの故郷カラブリア産の黒トリュフ。これはじっくり煮込んだ牛肉の旨味とパスタの中に閉じ込めた満足度高い料理。3食のソースも美しく、かつ美味しく、大地を連想させる黒トリュフの香りが全体を見事に調和させている。イタリア人シェフは、どんなにクリエイティブな料理を追求してもことパスタに関しては伝統的技法を尊重するのがアイデンティティ。サルヴァトーレ・モレッロもやはりそうした黄金律に関してアンタッチャブルなのだろう。テクニックは最新ながらも味はあくまでノスタルジックなイタリア料理。いつまでも忘れられなくなりそうなパスタ。

国際経験豊かなサルヴァトーレ・モレッロがシェフに就任した新生「インキオストロ」はイアリア料理の現在到達点を知る意味でも試す価値があるレストランだ。サルヴァトーレ・モレッロにとってミシュラン1つ星はあくまでも通過点であり、さらなる高みがその視野に入っていることは想像に難くない。日本の食材や調味料など、聴き慣れた単語があちこちに登場するのも国際経験豊かなシェフならではの自由な発想であり、こちらとしては一体どうんな風にイタリア料理に昇華させるのか?一品一品が楽しみでしょうがない、そんな気分にさせてくれる。

また「インキオストロ」は地下にあるワインセラーも特筆もので、レア・シャンパーニュからプレミアム・イタリア・ワインまでまるでワインを販売するエノテカのような美しいディスプレイで展示してある。セラーの中に設けられた1卓限定のスペシャルテーブルは予約も可能。さまざまなワインに囲まれて過ごすプライベートなひとときもまた、きっと忘れられない時間となるはずだ。

インキオストロ INKIOSTRO
https://www.ristoranteinkiostro.it/

Via San Leonardo 124, PARMA(PR)
Tel0521-776047

 

記事:池田匡克