Storie di passione italianaイタリアに恋しちゃう物語

ミラノ発 ニューノーマル時代の新しい共食スタイルを提案するMETA

ミラノに実験的なフードスポットが誕生した。Merging taste(味の合体)から最初の音を取り、「META」と名付けられたそこは、一見すると小規模なフードコートである。が、実は緻密な戦略に基づいた斬新な食のスタートアップ・プロジェクトだ。

プロジェクトを立ち上げたのは、ルドヴィコ・レオパルディとレオ・スキエッパーティという20代の二人。共にロンドンでファイナンシャル・マネージメントの分野で実践的な経験を積み、イタリアに凱旋帰国するにあたり、アメリカやイギリスで急成長を遂げたゴーストキッチンの仕組みを分析。イタリアの市場により適したスタイルを練り上げた。その答えが、デリバリーと食を共に楽しむ経験を両立させること。提供するフードのレベルは高く、しかし価格は手頃で、社会的にも環境という観点からも持続可能性に留意した“フード・コレクティブ”(食の集合)という考え方だ。

パンデミック禍にある今、デリバリーとテイクアウトは飲食業界の中心的役割を担っている。METAではさらに一歩進んで、ゴーストキッチン、デリバリー、テイクアウト、イートインを合体させた新しい形態を提案している。特に星付きレストランのシェフや最先端グルメを追求するレストランが、自分の店を使うことなく、よりカジュアルなデリバリーダイニングを通して実験的なクリエイションを試みる場として活用してもらうのが狙いだ。そのため、場所、システム、流通、そして売上を共有することで初期投資を極力抑え、参入のハードルを下げている。

オンデマンド・デリバリーのための独自のプラットフォームも開設し、利用者はアプリやウェブで好きなフードやドリンクを複数の出店者に跨ってオーダーできる。デリバリーは専用の電動バイカーが担うので、誰が届けに来るのかわからない従来のシステムよりも安心度が高く、出店者にとってもイメージを損なわず、きちんと届けられるという保証が得られる。今や、デリバリーも環境に配慮し、安心、安全を確保することは不可欠な命題である。さらにユニークなのが、必ずしも決まった住所を入力する必要がないこと。つまり、公園や広場などアウトドアで食べたいというニーズにも答えられるのだ。

新イタリア料理を提唱し、現代イタリア料理の礎を築いたグアルティエロ・マルケージのリストランテがあったボンヴェズィン・デ・ラ・リーヴァ通り3番地がMETAの拠点である。そこに5つの店が入居し、エシカルとサステナビリティを念頭に置いたフードとサービスを展開する。カフェ、レストランとして朝から夜まで営業し、イートインには店内テーブル席、カフェカウンター、そしてアウトドア80席を用意している。

5つの店はそれぞれが季節の食材を中心としたメニューを考案、時には外部とのコラボレーションによる期間限定の特別メニューも提供する。入居する店の選定は飲食分野のエキスパートで構成する審査会が担い、食材や納入業者に至るまで細かくチェックを行う。現在、METAには、カフェ、米料理専門店、シチリア料理店、ジェラテリア、最新の調理技術を駆使した料理を提供する店が入居している。

イタリア人の暮らしに欠かせないカフェを提供するのはOrsonero Coffee。ミラノにサードウェーブコーヒーを本格的に広めたことで知られるスペシャルティコーヒー専門店である。オリジナルのヴィエノワズリーも美味しい。午後からはクラフトビールも缶とドラフトでサーブされる。

シチリアからはミシュラン二つ星「ラ・マディア」のピノ・クッタイアによるUovodiseppiaが登場。アグリジェント近郊の海辺でカジュアルな魚介料理を得意とするが、METAではシェフの郷土シチリアと修業時代を過ごしたピエモンテの味をモチーフにストリートフードを仕立てる。アランチーノ・アペルト、カジキのインヴォルティーニ カポナータ添え、トラーパニ風ペーストのラヴィオリ、そして分解カンノーリなどがメニューに並ぶ。

Young RiceはMETAオリジナルの米料理専門店。米は世界各地で栽培されているが、特に生産量の少ない米にスポットライトを当てることでサステナビリティの意識を高めたいというのがこの店の出発点。仔牛ほほ肉のグラッサートを添えたミラノ風リゾット、エバーノ(黒米の一種)玄米のカリフラワークリームのほか、アジアの米料理も提供していく予定。また米だけでなくキノアなど他の穀物を使った料理もある。
Rareも同じくMETAオリジナルの調理技術実験キッチンだ。炭火焼と同じ効果が得られる遠赤外線オーブンを使い、肉、魚、野菜の持ち味を引き出す。ローストビーフとツァズィキソースのベーグルサンド、ジンジャー風味のヴィテッロ・トンナートを包んだピタなど、料理コンセプトはフュージョン。

近頃ミラノで人気を博しているジェラテリアGusto 17も出店している。16種類の定番と人気投票で選ばれた1種類の合計17のフレーバーを揃え、さらにグラニータ、フラッペ、アイスケーキ、アイスバーなどもある。

一皿の値段は10ユーロ〜、平均15ユーロとミラノにしては抑えめの設定。ドリンクは自然派ワインを中心にイタリア各地のワインを取り揃え、グラスワイン4.50ユーロ〜と、ちょっと飲んでみたいという気持ちにさせる価格設定だ。

イタリアでも最新のコンセプトやテクノロジーを誇るミラノの飲食業界において、METAはより先進的なフード・プロジェクトとしてさらに進化を続けるという。刻々と変化する状況に柔軟に対応する力をつける。それがパンデミックがもたらした功罪のうちの数少ない功績の一つだろう。

META – Merging Taste
Via Bonvesin de la Riva, 3 Milano
https://www.tastemeta.com

 

 

記事:池田愛美