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最新グルメ情報1フィレンツェ発テイクアウェイ・カクテルのムーブメント

フィレンツェ発テイクアウェイ・カクテルのムーブメント

2020年のクリスマスから年始にかけてというもの、イタリアでは全州がZona Rossa(ゾーナ・ロッサ=赤地区)として行動が厳しく制限されていたが年が明けてからというもの状況も徐々に改善し、現在は全ての州がZona Arancione(オレンジ地区)またはZona Gialla(黄色地区)へと緩和された。とはいえ最も制限が緩やかなZona Giallaでさえレストランやバールの営業は18時までに制限されており、残念ながら友人や家族とレストランで夕食を楽しむ、という段階までイタリアの日常生活は戻っていないのが現状だ。その代わり、といってはなんだが、18時までのわずかな時間をせめて楽しもうとする第二次アペリティーヴォ・ブームが盛り上がりを見せている。

昨年の9月、フィレンツェにオープンしたカクテルバー「フロレアル Floreal」では18時以降でも自宅でカクテルを楽しんでもらえるよう開発した、オリジナルの缶入りカクテルが人気となっている。というのもたとえ会社が17時に終わったとしても友人や同僚たちとアペリティーヴォを楽しめるのはわずか小一時間。その続きはご自宅でどうぞ、というのが「フロレアル」の提案なのだがこれが非常に好評なのだ。

「フロレアル」はアントニオとダニエレという2人のバーテンダーがカウンターで腕を振るう新世代のカクテル・バー。ミクソロジーを全面に出したカクテル・バーは世界的に大流行しているが、これまでカクテル後進国だったイタリアもここ数年は個性的で優秀なカクテル・バーが次々に登場している。「フロレアル」は、本来まだまだイタリアでは馴染みがうすいメキシコ産のスピリッツ「メスカル」をベースとしたカクテル・バーとしてオープンしたが、メスカル以外のオリジナル・カクテルは全メニューテイクアウェイが可能。注文すればカウンターでアントニオとダニエレが見事な手さばきでカクテルを作り、なんともイタリアらしいポップなデザインの缶に詰めてくれるのだ。さらに嬉しいサービスは業務用のバーアイスも一緒につけてくれること。家庭の冷蔵庫で作った氷とは違い、美しくなかなか解けないバーアイスとともに自宅でいっぱいを楽しむのはなんともいえない至福の時間だ。

例えばジェームス・ボンド(風)のイラストが描かれたカクテルは「ドライ・アンド・ストロンガー Dry & Stronger」₡13はタンカレー・ナンバーテン、ベルサザール・ローズ・ベルモット、キンカンとロングペッパーの自家製ビターを使ったオリジナルのドライ・マティーニ。しかしこれがまたジェームス・ボンドも思わずたじたじとなるようなドライでストロングなマティーニ。ほのかに香るバラや胡椒、柑橘の香りを楽しみつつロックでちびちびやるのがたまらない。

「リトル・モンキー Little Monkey」₡12はバンブー・スパイスド・ラム、チンザノ・ベルモット、カンパリ・ビター、ピメント・ドラム、カカオ・ビターを使った、ほろ苦さの中にも甘さが隠れている大人の一杯。チンザノやカンパリを使ったイタリアらしい味と香りはなかなかパンチがあり、こちらは食後酒向き。イタリアでは最近食後酒はDa meditazione(瞑想用)と表現されることが多く、目を閉じてゆっくりと楽しむというニュアンスが多分に含まれている。

テイクアウェイのカクテルもいいけれど、実際に店に足を運んでできたてのカクテルを味わいたいという人にはメスカルを使った「メスカル・ドラム Mezcal Drum」₡13がいいだろう。これはMezcal del Maguey Vida、Lillet Rouge、Luxardoアプリコット・ブランデー,Mediterraneoビターを使った中南米らしい、しかしローズマリーやセージなど地中海らしい香りがする一杯。これはまさに食欲増進、胃を開くと本来のアペリティーヴォに最適だ。

「フロレアル」では現在はランチタイムのみバーフードを提供しているが、これがなかなかどうして。バーフードというレベルではない凝り用。トスカーナでよく食べるほろほろ鳥を使った「ほろほろ鳥のホット・ドッグ Hot Dog di Faraona」₡15はスモーキーなほろほろ鳥ソーセージ、ザワークラウト風の発酵キャベツを柔らかいパニーノで挟み込み、付け合わせにはローズマリー風味のトスカーナ風ロースト・ポテト。「フロレアル・サンドイッチ Floreal Sandwich」₡9は見た目はオースドックスなサンドイッチだが中身はプロシュット・アロスト、ポモドリーニとタマネギのカラメッラート、そしてアボカドを使ったグアカモレ・ソースとオリジナリティあふれるテイスト。しかもボリューム満点。夜の営業が可能になったら、アントニオとダニエレは新しいフードメニューを提供する準備もすでにできている。新メニューは、フィレンツェ近郊ポンタッシエーヴェの「ポデーレ・ベルヴェデーレ Podere Belvedere」とコラボ。同店はアグリツーリズモだが、自家菜園や地元食材をシェフ、エドアルド・ティッリ Edoardo Tilliが最新の調理技術でクリエイティヴに食べさせてくれるのだ。コンセプトは2000年代初頭「エル・ブジ El Bulli」のフェラン・アドリア Feran Adriaの新スペイン料理が世界を席巻した頃のスタイルをイタリア風に表現。ミクソロジー・カクテルと最先端のバーフード、というスタイルはいままでのイタリアには存在しなかった新しい形。コロナ禍でも進化を止めないイタリアのバー&フード業界は、今年も動きが非常に活発だ。

記事:池田匡克

FLOREAL
住所:Borgo San Frediano,27r FIRENZE
Tel:+39-345-1647856
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