イタリア発のデニムブランドはエコフレンドリー
海のイメージが魅力

デニムにはアメリカのイメージが強く、日本も名産地ですが、実はイタリアはデニムカルチャーが深く根付いている土地柄です。2014年にイタリアでスタートした「CAPTAIN SANTORS(キャプテン サントル)」は、まだ7年目の比較的若いデニムブランドながら、ヨーロッパの有力セレクトショップで取り扱われていて、支持と知名度が広がっています。

 

最大の特徴は「海」とのつながりにあります。ベースに選ばれているのは、海で働く船乗り、漁師、セイラーの作業着。色も海を思わせるブルーがきれいで、実際に海で働く人たちに愛用されているそうです。ワークウエアに由来する丈夫さや風合いには日本でもファンが増える傾向にあります。モチーフに船の錨(いかり)マークや人魚など、海にまつわる絵柄が多用されているのも、「CAPTAIN SANTORS」の持ち味です。
海に縁が深いだけに、サステナビリティー(持続可能性)への目配りも行き届いています。コットンやウールなどの天然素材を使い、染色に用いる自然藍は日本から取り寄せているそうです。天然素材ならではの質感が自然体の着こなしに導いてくれます。今回は「CAPTAIN SANTORS」の新作コレクションを通して、デニムを使ったスタイリングのコツをつかんでいきましょう

性別にとらわれない、大人のオーバーオール

この1年ほどで世界的にぐっと人気が高まったデニムアイテムに、上下がつながったパンツの「オーバーオール」が挙げられます。もともと作業着の性格を持つだけに、作業着に原点を持つ「CAPTAIN SANTORS」にとってはお得意のアイテム。メンズとウィメンズの両方で打ち出されています。
ややキッズのイメージが強いアイテムだけに、幼く見せない着こなしがポイントになります。大人に似合うオーバーオールはやはり上質感が鍵。素材、シルエット、ディテールという「大人仕様」に導く3要素が決め手です。
カジュアル感をやわらげるには、襟付きシャツに重ねるのが得策です。シャツ特有の「きちんと感」がデニムルックに落ち着きや品格を寄り添わせてくれます。
白シャツとインディゴブルーは、さわやかなカラーバランスに整うコンビネーションです。一方、ブルーシャツを選べば、全体の色なじみがアップし、クールな着映えに仕上がります。
腰に添えたビッグポケットはワークウエア感を印象づけるキーディテール。過剰にダボつかせないすっきりシルエットがシャープな着映えに導きます。そして、最も肝心なのは、風合いのよい上質デニム素材。穿き込むうちに味わいが深くなる経年変化の楽しみも、デニム生地のクオリティーがあればこそです。

小さなパーツにも自負
きめこまやかなディテール演出

大人デニムに特別感をまとわせるのは、ボタンや金具といった、小さなパーツ類です。割と目立たない存在ではありますが、「どこか違う」と感じさせる効果は、そのサイズ以上に大きいもの。優れたデニムブランドは、それぞれにこうしたパーツ類にこだわりを持っていて、もちろん「CAPTAIN SANTORS」も例外ではありません。

 

たとえば、2022年春夏コレクションではハンドメイドのボタンで手仕事感を宿らせています。すべてイタリア製です。シャツのボタンはボーン(骨)製。その他のウエアのボタンは植物性のコロゾでこしらえました。南米産のコロゾは「象牙ヤシ」の実。実が熟すと、象牙のように硬くなるところから、名前がついたといわれています。着続けるうちに愛着がわくのは、こうした格別なパーツだからこそ。プラスチック樹脂とは別物のナチュラル感が装いに表情を加えてくれます。
服選びの上手な人は金具をはじめとするパーツの吟味に抜かりがありません。長く着続ける場合、生地以上にへたりやすい部分だからです。メッキがはげたり、がたつきが起きたりすると、服がきちんと機能しなくなってしまいます。
機能面だけではありません。パーツの質感は、装いのクオリティーに直結します。チープに見えないパーツは、センスを左右するポイント。ヴィンテージライクな風合いにも目配りした「CAPTAIN SANTORS」のディテールはこだわりのたまもの。ここが大事な「本物感」の由来です。
デニムパンツに添えられたレザーパッチはブランドの「顔」的なパーツです。「CAPTAIN SANTORS」のパッチは風格たっぷりの顔つき。ウエストあたりでしっかりにらみを利かせてくれそう。「AUTHENTIC」「HANDMADE」「IN ITALY」の言葉が誇らしく書き添えられていて、ブランドの本質を主張しています。

自然と愛着がわくユーズド加工
使い込んだようなヴィンテージの風合い

デニムルックにこなれ感をまとわせるには、風合いが大事になってきます。経年変化を思わせるヴィンテージ風の質感は、落ち着いたムードを呼び込みます。
「CAPTAIN SANTORS」は商品開発のリサーチに、ヴィンテージショップを加えていて、もともと古着ライクな風合いの表現を得意としています。程よくインディゴブルーがかすれていたり、色があせていたりするヴィンテージテイストは、長い間かけて使い込んだよう。ワンピースや上下セットアップで取り入れれば、気負わないムードが一段と濃くなります。
おなじみのインディゴブルー以外にも、様々なデニム生地に「CAPTAIN SANTORS」は着古したような加工を施しています。適度なユーズド感が備わり、着こなしのバリエーションも広がります。

大自然となじむエコフレンドリー生地
自然体の着映えに

天然素材を主体とした装いは、アウトドアの場面にしっくりなじみます。エコフレンドリーなウエアをまとって、自然と親しむのは、気持ちが伸びやかに整う体験です。
デニムジャケットは両胸ポケットの着丈短めタイプがおなじみですが、大人がまとうなら、テーラードジャケット風も選択肢に加えてみましょう。ジャケットに正統派イメージが備わっていれば、ボトムスはショートパンツでも構いません。あえて同系色のデニムパンツを選ばず、シャツやパンツで色をずらしてみるのも、全体のバランスを整える方法です。
海から始まっているだけに、「CAPTAIN SANTORS」のデニムウエアは水辺との相性が抜群です。ワンピースやセットアップなら、デイリー仕様より格上の「デニムクチュール」感をまとえます。帽子も生かすと、デニム素材でもドレッシーなたたずまいに。ショート袖を選んだり、袖をまくり上げたりして、適度に素肌をのぞかせると、全体のバランスが健やかなイメージに整います。
「CAPTAIN SANTORS」のアイテムには、海にまつわる様々なモチーフ(絵柄)がウィットフルにあしらわれているので、印象的な着映えに仕上がります。上質素材との好相性がモチーフのイメージをさらに引き出しています。
あれもこれもと手を広げないで、素材やアイテムを絞り込むブランドに支持が広がってきました。特化型ブランドならではのこだわりや技法、表現力などが信頼・評価される理由。海とのつながりや独自の技術力、世界から集めた素材などの面で強みを持つ「CAPTAIN SANTORS」も、そうした特化型ブランドです。見慣れたデニムウエアとはひと味違うタイプが手に入るから、早めのチェックがおすすめです。
ファッションジャーナリスト 宮田理江

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