今欲しいのはボリューム靴!
イタリア製ならではの品質とデザイン性

足をくるむようなボリューム靴のトレンドが続いています。具体的には大ぶりのダッドスニーカーや兵士靴に由来するコンバットブーツ、工場靴から転じたエンジニアブーツなどが人気のアイテム。もともと男性靴からのインスパイアは、性別を意識させない「ジェンダーレス」のトレンドにもマッチしています。
「ヒール靴に比べて歩きやすい」「厚底のおかげで、フラットシューズよりも脚が長く見える」などのメリットがあります。再び人気が出始めているミニ丈ボトムスにも好相性。脚を華奢に演出してもらえるスタイルアップ効果が若い世代から支持されています。
そうした長所が評価されて、様々なボリューム靴が提案されるようになってきました。バリエーションが増えてきたおかげで、大人世代にまでブームは広がりを見せています。イタリアの新鋭ブランドからも、ボリューム靴が相次いで提案されています。今回は「RBRSL_RUBBER SOUL(アールビーアールエスエル ラバーソール)」と「Vic Matie(ヴィック マティ)」の2ブランドを通して、ボリューム靴の魅力を紹介します。

ダッドスニーカーの進化が止まらない ブーツ感覚でおしゃれ履き~「RBRSL_RUBBER SOUL」~

エドゥアール・マネは実生活を描かず、彼の感情を表現するのに使ったと言われる。RBRSL SS_22コレクションのコンセプトはここから来ています。
現実の認識、形の自然さ、自由と反逆の根底にある考え。あなたが自分自身になる勇気を持つ時、きっと何かに抗うでしょう。 RBRSLコレクションは、自由で勇敢な考え方を、そのまま表現するのです。
システムを揺るがし、今日の新たな時代を始める必要がありました。より現実的で急進的な世界です。いくつかのルールを破壊し、新たに作り出す。ただ一つ創造に必要なもの、それは「時間」です。
ゴツめのボリュームスニーカーは一般に「Dad Sneaker(ダッドスニーカー)」と呼ばれています。「Dad」は英語で「父親」という意味。まるでお父さんが履いているような、ちょっとレトロな表情がかえって装いにこなれ感をもたらしてくれると、おしゃれ好きの間で人気を博しています。一般的なスニーカーよりリッチな量感を生かして、ブーツ感覚で履きこなす人が増えてきました。
おしゃれ上級者が好むだけあって、ダッドスニーカーにはメリットがいっぱい。「RBRSL_RUBBER SOUL(ラバー・ソウル)」のスニーカーを履いたインフルエンサー2人の写真からも分かる通り、モードにもマニッシュにも履きこなせます。ゼブラ柄風のセットアップは大胆で派手目な雰囲気ですが、ダッドスニーカーのおかげで、スポーティーな軽やかさが加わりました。英国紳士風のピンストライプ柄のロングコートにスキニーデニムを合わせたダッドスニーカールックはヘルシーさとクラシックがミックスされ、ジェンダーレスな仕上がりです。このようにショートブーツ感覚で生かすのが賢い迎え入れ方です。
RBRSL_RUBBER SOUL」はストリートとクチュールの要素を兼ね備えたハイブリッド感が持ち味。アッパー部分のアスレティックな印象とは裏腹に、ソール部分はカラフルで、視線を引き込みます。まるで「履くアート」や「履くジュエリー」のよう。上下2層で異なるデザインを施し、さらに表情を味わい深く見せるアイテムも登場。原料の再利用やアップサイクルに関する取り組みを強めたのも、2021年春夏のポジティブな動きです。
デザインのリーダー役、チーフクリエイティブオフィサーのValentina Curzi(ヴァレンティナ・クルチ)氏は創業者の娘。「RBRSL_RUBBER SOUL」はイタリアの伝統であるファミリービジネス(家族での事業展開)です。
世界の4大コレクションに位置づけられているミラノ・ファッションウィーク(通称ミラノ・コレクション)に、「RBRSL_RUBBER SOUL」は21年春夏シーズンからデビュー。「No age, no gender, no time, no space, upcycling」というメッセージを発信しました。100%のメイド・イン・イタリアならではの丁寧なハンドクラフト仕上げは、おしゃれのキーピースにふさわしい特別感を寄り添わせてくれます。「スニーカー=カジュアル」という概念を覆し、おしゃれブーツ感覚で楽しめる新しい提案です。
ユーチューブでは「RBRSL_RUBBER SOUL」の工程が公開されているので、丁寧な仕事ぶりを動画で確かめることができます。

タフなブーツでスタイルアップ! トレンドのミニボトムスとも好相性~「VIC MATIE」~

味わい深く見せるアイテムも登場。原料の再利用やアップサイクルに関する取り組みを強めたのも、2021年春夏のポジティブな動きです。「VIC MATIE(ヴィック マティ)」はドレッシーなパンプスや軽快なサンダルなど、幅広くおしゃれシューズを手がけるブランドです。バッグやアクセサリーも製造しています。実は「Vic Matie」も先にご紹介した「RBRSL_RUBBER SOUL」と同じクルチ家の事業です。1987年の創業で、来年で35周年を迎えます。皮革工業が盛んなイタリアの職人技が発揮されるアイテムにブーツがあります。2021年春夏シーズンに「VIC MATIE」が提案したのは、タフな顔つきのコンバットブーツやサイドゴアブーツです。
いわゆる「タフ顔」のブーツには、戦場に由来するコンバットブーツや、工員が履いたエンジニアブーツなどがあります。近ごろは脱ぎ履きが楽なサイドゴアブーツも人気です。コンバットブーツやエンジニアブーツは正面のひもで結ぶレースアップ式が一般的ですが、サイドゴアは伸縮性に富むゴム入り素材を両サイドに配して、スムーズに脱ぎ履きできるようになっています。
先に挙げたダッドスニーカーもたっぷりの量感が魅力でしたが、コンバットブーツやエンジニアブーツはボリュームに加えて、レザー特有のつややかな質感もおしゃれ感を引き立ててくれます。足をどこかにぶつけたりしても丈夫さや安定感が安心にもつながります。足首やふくらはぎまで覆う丈長タイプはレッグラインの引き締め効果が抜群。足元にしっかりボリュームが備わるので、脚の細感が際立つ仕掛けです。たっぷりの厚みがあるソールは主張も十分。頼もしい安定感もこういったタイプの魅力です。
皮革製品の産地として名高い、イタリア北東部のマルケ州。「VIC MATIE」の創業の地もここでした。レザーのプロが集まる土地柄だけに、「VIC MATIE」の靴にも伝統の職人技が受け継がれています。匠の技を生かしながら、モダンなデザインを取り入れているのが、「VIC MATIE」が世界で支持される理由。もともとウィメンズシューズから始まり、2018年にはバッグとアクセサリーへ、19年にはメンズシューズにもビジネスの幅を広げました。
トレンドの袖コンシャスや大襟ブラウスなど、ロマンティックなトップスを着る際、足元にスパイスを添えるのに役立ちます。日本でも人気が高まってきたミニワンピースやミニボトムスとのバランスづくりにも活躍してくれます。写真のようなフェミニンな装いにも自然となじむ、淡いベージュのようなやさしげトーンも登場し、選択肢が増えてきました。
ブーツ系のほかに、サンダルやサボなどにもプラットフォーム(厚底)のタイプが続々とお目見え。バリエーションが広がってきました。こちらの写真のようなスタイリッシュなパンツにも好バランスを発揮。ソックスやタイツなどの選び方次第で、多彩なムードを引き出せます。
ボリュームシューズは年間を通して、出番を選ばない「シーンフリー」で使えるユーティリティー(重宝)なアイテムです。しかも、着る服と合わせやすいから、出番が絶えません。足元に程よいスパイスを添える効果も期待できるボリュームシューズ。さすがのクラフトマンシップとデザイン性を併せ持つ、イタリア発のモデルを迎えて、自分らしい着こなしに役立ててみませんか。
ファッションジャーナリスト 宮田理江

FASHION BIBLE       INSTAGRAM