偉大な女性たちをリスペクト!
共感と愛着がわくバッグに注目

ファッション小物のうち、自分の分身とも言えそうな存在がバッグです。最もプライベートな品物や貴重品を持ち歩くだけに、お気に入りを選びたくなります。1968年にイタリアのミラノで創業した「Le Biondine(ル ビオンディーヌ)」は丁寧な手仕事技とユニークなアプローチが持ち味。「メイド・イン・イタリー」を守りつつ、革新的なデザインを試み続けています。
たとえば、バッグのネーミングには、歴史上の偉大な女性の名前が選ばれています。尊敬に値する女性たちをイメージしたバッグは、共感や愛着を呼び覚ましてくれそう。装いに気品やりりしさを呼び込む効果も期待できます。

ループ持ち手の存在感
格上のかごバッグ

アクセサリーのようなリング状ハンドルが目を引く縦長バッグの「SIBILLA(シビラ)」。植物素材で編み上げたバッグは、装いにナチュラル感を寄り添わせます。一般的なかごバッグは、カジュアルな印象が強いものですが、こちらは上品でスタイリッシュな見え具合。イタリア人女性作家、シビラ・アレラモに捧げたバッグです。
アレラモは20世紀前半にイタリア女性の伝統的な役割を非難した、勇気のあるフェミニスト女性です。暴力を振るう夫を捨てて、作家の道へ。今回の「シビラ」バッグは彼女のキャリアを讃え、女性の権利の尊重を示しています。

クールな異素材ミックス
出番を選ばない頼もしさ

格子状のベルトでボディをサポートする構造と、チェック柄のような見栄えが印象的な「LADY LINDY(レディ リンディ)」。モノトーンの配色とたくさんのスタッズ(鋲、びょう)がクールなたたずまい。異素材のミックスが味わい深い表情を引き出しています。
「レディ リンディ」という名前は、1932年に女性パイロットとして初めて大西洋単独横断飛行を達成した、アメリカ人飛行家、アメリア・エアハートの愛称です。このバッグは彼女に捧げられました。アメリアの勇気と大胆さを感じさせるデザイン。着こなしとの相性や持っていくシーンを選びません。

ザクザク使える万能バッグ 
アートライクなシンプル美

オールホワイトのトート型バッグ「CORITA(コリタ)」は、清楚でクリーンなムードを醸し出します。メッシュ風のボディは、見るからに涼やか。横幅が広くて、出し入れがスムーズ。A4サイズもザクザク投げ込める、収容力たっぷりの使いやすいバッグです。
修道女、教師であり、ポップアーティストとでもあったコリタ・ケントに捧げられています。「ポップアートの修道女」と呼ばれたケントは1960~70年代にアート界で高く評価され、大きな足跡を残しました。このバッグもアートピースのような存在感を備えています。

クラフトマンシップが薫る
女性印象派画家にオマージュ

丁寧な編み込みに職人技が感じられるバッグは、シックでありながら、気取らない雰囲気が漂います。布製でもしっかりした厚みがあり、型崩れの心配は無用。ハンドルが長めで、持ち方が選べるのも使い勝手に優れているところです。
こちらの「BERTHE(ベリト)」バッグは日本でも人気の高い女性印象派画家、ベルト・モリゾに捧げられています。初期印象派では数少ない女性の画家だったモリゾは、芸術の世界から女性を排除するような偏見と闘いました。画題を制約された彼女は家庭の風景を内省的に描き、独自の宇宙を生み出しました。

お仕事バッグにもぴったり
体に沿うすっきりシルエット

ノートパソコンやA4書類がきちんと収まるバッグは、ビジネスパートナーのような存在。同時に、優美さやあでやかさも手に入れたくなる欲張りレディには、こちらの縦長バッグ「FREYA(フレイア)」がおすすめです。マチが広すぎないので、ボディに無理なく沿い、すっきりしたシルエットを際立たせてくれます。
イギリスの作家、考古学者、旅行者だったフレイア・スタークは「アラビアのローレンスの女性版」と評されたほど、行動的な人物でした。アフリカや中東などを探検した波瀾万丈の生涯は、女性の国際的な活動に道を開きました。エスニック調のモチーフには、彼女の人生が写し込まれているかのようです。

丸みを帯びた愛らしいフォルム
飾らない質感が自然体ムード

ひもで口を絞る巾着型のバッグは、しまう品物の形が自由で、オフのお出掛けに重宝します。写真家のティナ・モドッティに捧げられた「TINA(ティナ)」は、ボディがたっぷりしているから、ポンポンと放り込むような使い方に応えてくれそう。ざっくりした穀物袋風の風合いも、気負わない自然体の装いになじみます。
イタリア生まれのモドッティはメキシコに渡り、女性アーティストのフリーダ・カーロや、その夫のディエゴ・リベラらと交流。メキシコから多くの写真を発表しました。キューバの革命家と出会ったこともあって、徐々に政治的な姿勢を強めていき、作品や行動もメッセージ性を帯びるように。波乱に満ちた生涯を送った女性表現者でした。

エレガンスとあでやかさの調和
手仕事技のタイムレスな魅力

鮮やかな配色の花柄が刺繍されたクラッチバッグの「CHARLOTTE(シャルロット)」は、装いにあでやかやさリュクス感をまとわせてくれます。シックでシンプルな装いにも、素敵なアクセントをプラス。パーティーやお呼ばれシーン以外に、普段着の格上げにも役立ちそうです。
このバッグが捧げられたのは、モナコ公国の現在の国家元首、アルベール2世の祖母にあたるシャルロット夫人。ちなみにアルベール2世の母はハリウッド女優から大公妃に迎えられたグレース・ケリーです。シャルロット夫人は息子のレーニエ3世が王位に就けるよう、世継ぎの地位を放棄。引退後は居城内に元受刑者のリハビリテーションセンターを構え、社会復帰を手助けしたそうです。

レトロ可愛いがま口タイプ
手仕事刺繍で装いを格上げ

ファッションの世界では、クラシックで懐かしげなデザインに光が集まっています。「GEORGINA(ジョルジーナ)」バッグのノスタルジックながま口金具はレトロ感がたっぷり。手の込んだ刺繍柄も、穏やかでクラッシィなムードを醸し出しています。
19世紀フランスを代表する女性作家のジョルジュ・サンドをイメージしたバッグです。サンドは作曲家フレデリック・ショパンとの熱愛でも有名。女性の権利を求める初期のフェミニストでもあり、女人禁制の場所へ男装で訪れたエピソードでも知られています。
歴史を彩ってきた、先駆者的な女性たちにリスペクトを捧げたバッグシリーズは、装いに添えるだけで、静かな自信や、誇らしい気持ちまで迎え入れてくれそう。ストーリーやポリシーがしっかりしているアイテムには、自然と愛着もわきやすくなります。2021-22年秋冬シーズンにはクラシック感や手仕事技が再評価されるから、その意味でも職人技を磨き続ける「ル ビオンディーヌ」のバッグには心を動かされます。
ファッションジャーナリスト 宮田理江

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