Storie di passione italianaイタリアに恋しちゃう物語

料理界のトップと自動車界のトップのコラボ フェラーリのリストランテ新生「カヴァッリーノ」

日本人を魅了するキラーコンテンツの宝庫であるイタリア。中でも「料理」と「車」はどちらにも巨星と称される抜きん出た存在がいる。それは、現代イタリア料理で世界一の称号も獲得した「オステリア・フランチェスカーナ」のマッシモ・ボットゥーラであり、創業以来世界中のファンをその本拠地マラネッロに引きつけてやまない「フェラーリ」だ。その二者がタッグを組み、このほど、マラネッロの本社工場に隣接するリストランテ「カヴァッリーノ」を完全リニューアル。同店は当初従業員の食堂として始まったが、1950年にレストランに生まれ変わり、以来、エンツォ・フェラーリが友人や客人をもてなした、フェラーリファンにとっては聖地の一つ。それが、“ロッソ・フェラーリ”と“カヴァッリーノ・ランパンテ”をキーワードに内装を一新し、料理監修は同じモデナ出身のボットゥーラが務めることになったのだ。

テーマは、「これまでの栄光の道のりを大切に、しかし、過去に拘泥するノスタルジーに陥ることなく、現在を見つめ、未来を見据える」。インテリアを担当したのは、パリを拠点に活動する建築家・デザイナーのインディア・マダヴィ。彼女のデザインの基本コンセプトである多色、多言語を軸に、パダナ平原の田園に佇む昔ながらの館の雰囲気を残しつつも、鮮やかさ、アウトラインの強さが、この「カヴァッリーノ」に新しい力をもたらしている。フェラーリの“跳ね馬”が無数のバターンとして随所に現れ、それぞれの時代をグラフィカルに物語る斬新なデザインのポスターが壁を彩り、メタリックな艶を放つ赤いフレームの客席椅子が目を引く。藁編みの座面が、田園の雰囲気を醸し出し、テラス席にはのどかな空気が漂う。

ボットゥーラは、共にモデナを故郷とするこの“同志”のために、モデナ伝統を尊重しつつ、現代イタリア料理が到達した技術、エッセンスを取り入れた料理メニューを考案。中には、エンツォ・フェラーリの妻リナ・ナルディの得意料理だった「マッケロンチーニ・イン・サルサ・ローザ」もあり、ボットゥーラ解釈で提供する予定だという。また、クラシックを現代的に再構築した例として、「ロッシーニ風フィレ」(またはロッシーニ風トゥルヌド、牛フィレ、フォアグラ、黒トリュフを重ねた料理)に着想を得た「ロッシーニ風コテキーノ」を挙げている。コテキーノは言わずと知れたモデナやその近郊の伝統食であり、大晦日のチェノーネには欠かせないメニューだが、豚足にひき肉などを詰め込んだ非常にヘビーな味わいで、現代の味覚にはあまり合わなくなってきているのも事実。それを真空調理でより軽く仕立て、モデナのアマレーナをソースとして、甘酸っぱいアクセントを添えた。また、マストな前菜と言われる生ハムを添えたニョッコ・フリット、ボットゥーラのアイコニックな一品として知られるパルミジャーノ・クリームたっぷりのトルテッリーニもラインナップされている。

新生「カヴァッリーノ」の船出に際してボットゥーラはこう述べる。「我々が厨房で料理する、フェラーリが一台を組み上げる、それらは、全く同じことだと思う。それは、ノスタルジーに浸ることなく厳しい目で過去の良きものを選び取り、未来に繋げることなのだ」。パンデミックの影響でイタリアの飲食業界は大きな打撃を受けたが、その苦しい時間に、今までの問題点を見つめ、未来のために新しいプロジェクトを立ち上げる動きも少なからずあった。この「カヴァッリーノ」も、博物館の添え物的なレストランではなく、自らの存在意義と革新性を追求する使命を背負っての新しいスタートを切った。暗く澱んだ厄災の時代から抜け出した“跳ね馬”が、どれほどのスピードで飲食業界を駆け抜けるのか楽しみである。

Ristorante Cavallino
https://www.ferrari.com/it-IT/ristorante-cavallino

 

記事:池田愛美