Storie di passione italianaイタリアに恋しちゃう物語

待望のチーズ専門店「フォルマッジョテカ・テロワール」フィレンツェにオープン

イタリアの食に欠かせないチーズ。しかし、あまりにも日常的すぎて、普段はあまりこだわらない人が多いのか、スーパーや食料品店では非常にオーソドックスなものしかない上に、さほど美味しいと思えないことが多い。味わいがニュートラルで、旨味に乏しいと感じるのだ。
しかし、美味しいチーズは探せばあることはわかっている。例えば、フィレンツェならワインバーの「Le Volpi e l’Uva」なら、普段はあまり出会えない、状態の良いチーズが食べられる。「Cibreo」が営むビオのスーパー「C.BIO」も、生産者は無名だが非常に美味しいチーズを販売している。ただ、ハムやサラミに比べると、美味しい状態のチーズに出会うのは難しく、そして今まで出会ったことのないチーズを食べてみたいという欲求はなかなか叶えられることがなかった。そんなフィレンツェにようやく登場したのが、「Formaggioteca Terrior フォルマッジョテカ・テロワール」だ。

不思議なその名前は、フォルマッジョとエノテカの合成。チーズだけでなく、そのチーズを美味しく食べることを前提にして、ワインにも力を入れているリアルショップである。テロワールの言葉が示すとおり、その土地の特性を物語る産物を厳選し、蜂蜜、ジャム、オリーブオイル、バルサミコ酢、クラフトビールなども揃えている。瓶詰め保存食では、パンツァーノ・イン・キャンティの名物精肉店「ダリオ・チェッキーニ」のペポーゾやトンノ・デル・キャンティ(茹で豚肉のオイル漬け)といったお惣菜もある。パンは、中央市場2階の「Pank」から。フランス・サンセール出身で、フィレンツェのパン業界に一石を投じた発酵の魔術師ダヴィド・ベドゥのパンと聞けば、これまた買わずにはいられなくなる。

オーナーは、ベルギー人のレベッカ・クリストファーセンとフランス人のピエール・グットノワール。レベッカは、1995年にフィレンツェに来て以来、ワインとイタリアの食の探求の道に勤しみ、ツアーオペレーター向けのガストロノミー・トリップをオーガナイズしてきた。また、ワイン・スカラー・ギルド(フランス、イタリア、スペインのワインのオンライン・エデュケーション機構。受講者は3国のうちの一つを選び、そのワインについてのプロフェッショナルを目指す)と提携し、イタリアで初めてのインターナショナルなワインスクール、イタリアン・ワイン・インスティテュートを設立、主に外国人生徒を受け入れている。
一方、ピエールは、フランスはロックフォールの故郷の出身。家は代々農業を営み、ピエールは農学者、農業技師、エノロゴとして15年間、フランスワインの大企業AdViniでフランス各地のワインの醸造、セレクションに携わってきた。そして10年前のある時、トスカーナ旅行の折にレベッカがオーガナイズするキャンティ・クラシコのガストロノミーツアーに参加。そこから、レベッカとともにトスカーナでのワインと食を追求する人生を歩むことになった。

その2人に転機をもたらしたのは、誰もの人生を一変したパンデミックである。今までのように外国人をリアルに受け入れることは当分難しい。そこで新しく目を向けたのが、フィレンツェに住む人々だ。パンデミックで厳しい移動制限が強いられている彼らに、自分たちが暮らすトスカーナの美味なるものをもっと知ってもらおうと考えた。それがリアルショップの「フォルマッジョテカ・テロワール」の誕生だ。
店で扱うチーズは主に、アレッツォ県カスティリオン・フィオレンティーノでチーズの熟成士として活動するAndrea Magiアンドレア・マージが手がけるイタリアのチーズと、フランスのMOFであるエルベ・モンスによるフランスのチーズ、そして、キャンティの農園「Corzano e Paternoコルツァーノ・エ・パテルノ」が作るペコリーノなど。また、ワインはビオやビオディナミのトスカーナワインが中心である。

今までにない試みといえば、いくつかのチーズを一つにまとめたチーズボックスだ。木製の箱は400g、500g、1000g、1600gの4種類があり、400gは「アペリティーヴォ」ミックス(25ユーロ)、500gはイタリアチーズ4種類(27ユーロ)またはフランスチーズ4種類(30ユーロ)、1000gはイタリアチーズ6種類(47ユーロ)またはフランスチーズ6種類(50ユーロ)のアソート。そして1600gのボックスにはイタリアとフランスのミックス8種類が収まっている(75ユーロ)。オリジナルの陶製チーズプレートも販売しているので、チーズボックス、ワインとともに入手すれば、ステイホームのアペリティーヴォのひとときに彩りをもたらしてくれそうだ。
今は、テイクアウトかオンラインショップを利用するほかはないが、制限が解除されれば、店内でワインとともにチーズを味わうこともできる。ひとまずは、いつか自由にトスカーナを旅する日を夢見つつ、このチーズボックスで知られざるチーズワールドの深奥を堪能したい。


Formaggioteca Terroir
Via dei Renai, 19 Firenze
tel.+39-333-7229716


https://www.formaggiotecaterroir.it

記事:池田愛美